こんにちはDeepValley(ディープバレー)の増田です。
2019年が明けて、ファッションシーンでは大手メゾンやデザイナーブランドではコレクションのシーズンになりましたね。
See Now Buy Nowが主流だ!トレンドだ!って言われているご時世の中で、1年先の商品を発表する事が正しいのかどうかみたいな意見もありますが、今日はそれはおいておきましょう。
そんなコレクションですが、今季も世界的にストリートの気分がたっぷりです。
ヴァージル・アブローのLuis Vuittonやキム・ジョーンズによるDior。
他にもバレンシアガやジバンシィ(ちょっとテーラーっぽいノリのが多かったけど)といった老舗のメゾンブランドもストリートテイストを取り入れたアイテムを数多くリリースして、人気を博しています。
そんなストリートファッション(カルチャー)とデザイナーズブランドについて今日は考えてみたいと思います。
デザイナーズブランドのリソース不足
そもそもファッションにおいて、ストリートファッションとデザイナーブランド(コレクション)では、それぞれターゲットも異なり、交わることなく発展してきたカルチャーでした。
極端な言い方ですが、量販店に並んでいるような洋服をお金持ちは気にしませんし、マスの方は、銀座や青山に構える様なブランド服を憧れていても、手にする経済的余裕はなかなかありません。
だからこそ両者がリンクすることもないし、その必要さえありませんでした。
そういった構造はファッションだけでなく、アートなど様々な領域で起こっていた事ですが、近年はそのボーダーが曖昧になってきています。
ファッションにおいて、その要因のひとつがデザイナーのリソース不足ではないでしょうか。
近年のファッション史を振り返ると、一昔前には現在もその名を冠とする様な革新的な表現力を持つスターデザイナーが次々と世に出てきていました。
しかし、そういった特別な才能を持つクリエイターが、昨今は少なくなっているのかもしれません。
もうひとつの要因が、LVMHやケリングの様に、個々で運営されていたファッションブランドが統合し、総合的なファッションカンパニーとしてコングロマリット化しています。
これもマス層とハイソサエティのボーダーを曖昧にする一助となっているのではないでしょうか。
主にこれら二つの要因が肥大化することで、ファッションのあり方が大きく変化している様に感じます。
偉大なデザイナーがいて、素晴らしいアイデアと仕立てを駆使し、最高の服を作りあげる。
その値段はずば抜けて高額だけど、一部の富裕層がそれらを手にし、それがステータスでもありました。
長らくそういった構造が続いていましたが、前述した様にブランドの統合、コングロマリット化が進み、そして世界的な多店舗展開を行なっていった事により、一部の富裕層を相手にするだけでは経営が成り立たなくなっていきました。
プレタポルテのブランドでは、バッグや香水、サングラスといった小物までと大幅に商品展開も加えなければならなくなり、その様に増え続けるラインナップすべてに革新的なデザインやハイエンドな作りを実現するには正直リソース不足と言わざるを得ないでしょう。
ストリートファッションの背景
デザイナーブランドと一線を画して、マス向けのアイテムをブランドのパワーと宣伝効果によって売るというビジネスの形で成長してきたのが、今のストリートファッションと呼ばれるものではないでしょうか。
シュプリームが行なっているブランドコラボなど、限定品を定期的に発売する様なドロップモデルの販売方法もこれらのブランドの特徴的な販売方法です。
そんなストリートファッションは、ある種の貧困から生まれるアイデアが軸になっています。
メディアが喧伝するようなコーディネイトを金銭的に構築することができないからこそ、独自にアイテムを組み合わせたり、象徴的なグラフィックを施す事で、ファッションをクリエイトしています。
それらは社会的に抑圧された庶民が、その不満から生みだす表現であり、ヒップホップカルチャーや街角の建物や壁などに落書きをするグラフィティも同様です。
それがストリートファッションの原点だと思います。
そうして世界的に様々なファッションカルチャーが形成されていますが、残念ながら日本おいては“ストリートカルチャー”と呼べるほどに成熟かつ規模を成したシーンは生まれてないように感じています。
“裏原系”と呼ばれるブームもありましたが、そこから生まれるアイテムを見てもファッションと呼べるレベルや確立したスタイルのものは少ないように感じます。
雑誌やメディアと連動して、知識の少ない若者たちにTシャツやトレーナーを法外な価格で売りつける様な部分だけがストリートファッションと言われてしまっている様にすら感じます。
それはカルチャーなんかではなく単なるビジネスですね。
今、日本の若者が自由に使えるお金も多くないと言われていて、古着のシャツなどに100均のアイテムを駆使してオリジナルの服を作り出したりしている現象があるそうですが、そっちの方がよっぽどストリートファッションの原点に近いんではないでしょうか。
ストリートファッションとデザイナーズブランド
冒頭の話に戻すと、ストリートファッションとデザイナーブランドが交わり始めました。
そして前述した様にマス向けの物と富裕層向けの物のボーダーが曖昧になってきていて、洋服の着方からして、昔と今では異なっています。
変化しつつある消費者のニーズに老舗のブランドがようやく応えはじめた結果、昨今デザイナーズブランドがストリートファッションの要素を帯びてきた理由ではと考える事はできますし、こういった変化により、ブランドは顧客と動的に関わりあうことができるようにもなります。
一方でストリートウェアが有するアングラ感やニッチ感を薄めてしまうという意見もありますが、逆を言えばストリートファッション(ブランド)が王道のファッションとして受け入れられたことにもなった傾向とも言えます。
ただデザイナーブランドがストリートファッションの要素を取り入れようとして、スケートボードの文化を取り込もうとしたり、ファッションショーでヒップホップの面を見せたりしていても本当にその世界観を体現しているわけではありません。
ライフスタイルとリアルであることが、ストリートファッションには欠かせない背景ですが、それらは賃借できる様なものではありません。
だからこそ、ストリートファッションが持つ熱狂的でオーガニックなカルチャーを欠いているという点を補う為に、カルチャーを背景に持つ様な有名人をファッションショーでのパフォーマンスを依頼して観客を呼び込んだり、トレンドや芸術を取り込んだりする様な手法は今後も続いていくのでしょう。
個人的にはそういった面こそがカルチャーに対しての侮辱の様に感じてしまう部分でもあります。
最後に
色々と現在のストリートファッションとデザイナーズブランドの関係について考察しましたが、個人的にはそれよりももっと根本的な商品背景の見直しが重要ではないかと思います。
確かに今回書いた様な、カプセルコレクションなどのドロップモデルといった販売方法。
ストリートファッション特有のリアルクローズの視点を起点としたクリエーションを取り入れることは時代に適したクリエーションやマーケティングという部分では大事かもしれません。
しかし実際の一般的な消費動向としては、従来あった夏服と冬服の明確な違いも、今の若い人達は、夏も冬もそれほどアイテム使いを変えたりしませんし、せいぜいアウターやミッドレイヤーを足したり引いたりしているくらいです。
常にTシャツをベースアイテムとして、年中同じものを着回している人も多いし、それがかっこいいと言う風潮さえあります。
にも関わらず、大手メゾンや大手ブランドでは年二回のコレクションや52週MDを繰り返していて、チグハグな状態になっている状態のところも多々あります。
今後もコングロマリット化が進み、マス層とハイソサエティのボーダーがますますなくなっていくでしょう。
それだけでなく、そもそも消費の動向自体も変化していく中で、生産背景という面は改善するべきポイントとして最も検討していかなければいけない本質の部分なのではないでしょうか。
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